「PRINT」
シーズンごとに新作１柄を発表しているプリントシリーズ。DOG柄、CAT柄に始まり、これまで動物モチーフ以外にアイスクリーム柄やスキー柄など様々なモチーフで展開しています。そんなプリントシリーズのイラストを手掛けているテンベアのグラフィックを担当している白石美久さんに今回はプリントを描く際の色々なお話をインタビューしました。
Q：イラストはすべて手描きですか？ イラストのテイスト、タッチはどんなことを意識して描いていますか。
白石さん（以下S.）：手描きです。キャンバスの表面がゴツゴツしていて、実際にプリントしたときに繊細な線を表現することが難しいので、あまりちゃんと削ってない鉛筆で描くことが多いです。作風やタッチは、あまり意識していません。やりたいイメージによって作風を変えています。意識していることは、柄のどこかに印象に残るシーン（違和感、驚き、発見など）を入れるようにしていることです。例えば、ピザ柄。ピザそのものを描くよりもデリバリーの様子を描きたいと思いました。中でもバイクは、誰でも街中で見かけたことがあるデリバリーの象徴的な存在なので、ピザ柄をより強い印象にしてくれたと思います。それに加えてピザを羨ましそうに見つめているパグ犬もまたこの柄のポイントになっています。（食いしん坊のわんちゃんを飼っている方なら共感してもらえるはず…）
一見、無機質、シンプルなタッチで統一されたイラストもユーモアやかわいさが仕込まれているのがテンベアらしさを感じるところ。ポップ過ぎず、ファンシーでもなく、大人にちょうどいいテイストなのが絶妙だと思います。そんなイラストを描き続ける白石さんは、子どもの頃から絵を描くことが好きだったそう。美術大学を目指し、高校から本格的に絵と向き合うようになり、見たものを本物そっくりに描くデッサンから水彩画などなど、学生時代に学んだ経験が、今の制作に繋がっていると感じているそうです。
Q：シーズンごとに新作を出す際、イラストのテーマの決め方はどんな風にしていますか？
S：シーズンのはじめに、気になる色やモノコトを羅列してキーワードを出していきます。選ぶキーワードは、誰もが知っていて、普遍的なもの。一言で言い表せるシンプルなものを意識しています。来シーズンの新柄は、ラーメンですがこの柄を考えていたのは、ちょうど活動自粛中の時でカップラーメンや乾麺がスーパーで買えない事態になっていました。インスタグラムでは、複数の友人がラーメン食べたいと掲載していたりして…。まだコロナの影響がなかった時も外国のお客さんに「日本で何がおいしかったか？」と聞くと、まず第一声に“ramen”と上がるほどでした。 “誰もが知っていて普遍的なもの“。ラーメンはまさに当てはまりそうだなと思い、新作のテーマに決めました。
Q：定番のDOG柄など、他の柄はどうでしょうか？
S：DOG柄は２種類あって、最初に出したものは図鑑に出てきそうなイメージでした。モノトーンで配置も整然と並んでいて動きがないものでした。いわゆるパターン柄を作るイメージ。そんなドッグ柄の新作を考えるきっかけになったのが、スキー柄です。スキー柄が登場するまでは、イラストはワントーンで仕上げていましたが、多色で動きがあるものを作成したのは、これが初めてでした。本来、犬はいろんな種類がいて毛並みも色も様々で、走り回る生き物なので、カラーにして動きのあるポーズを選んだ方が自然な気がしました。近所の公園にはドッグランがありよく散歩しに行っていたので、犬たちが戯れる光景を外から眺めていました。そのイメージが、今のレイアウトに反映されているような気がします。また洋犬に混ざって柴犬と甲斐犬の日本犬が混ざっているのもポイントです。洋犬柄のみ、または日本犬のみのグッズはよく見かけますが、ミックスされているのはあまり見かけないので、オリジナルの柄ができたと思います。テンベアではDOG、CATの２種類は動物モチーフの定番柄になりました。これらと肩を並べる定番になりそうな動物柄を作りたいと思ったのがBEAR柄になります。クマの種類はグリズリーで、北米に生息する大きなクマです。以前、星野道夫さんの写真展を観に行ったのですが、飾ってあったアラスカの光景やグリズリーの写真を思い出しながら描いています。クマたちを森の中に存在させることも重要で、アウトドアな雰囲気を出したかったので、青々とした針葉樹の緑はこの柄のアクセントにもなっています。グリズリーは１度に２、３匹の子供を出産するそうで、特に母クマの子育てシーンが印象的でした。そこで親子の姿を描くことにしました。
今回、白石さんに伺ったプリントシリーズが出来るまでのストーリー。今季のSUMMER＆FALLの展開は、DOG、BEAR、PIZZAとAMERICAN Breakfast柄だそうです。さらに2020秋冬は、DOG、CAT、そしてラーメンの３種類になります。遊び心を持ち歩く、そんなスタイルが日常をちょっと楽しくしてくれそうです。
Photo & Text : Chieko Koga(MOKA STORE)
