TEMBEA

EVENT:YUKI&DAUGHTERS

「架空のグローサリーショップ」

今週、4月17日にニューヨークのグローサリーショップがテンベアにやって来る! 海外旅行など程遠い今に、ちょっと海外気分を感じてもらえたら楽しいかも、という思いを乗せて、東京店と京都店にてイベントが開催されます。YUKI&DAUGHTERSこと松尾由貴さんが主宰する架空のグローサリーショップがテンベアショップにてオープン。松尾さんはアメリカ・ニューヨーク市のブルックリン在住で、ニューヨークでよく見かけるアイコン的フードをモチーフにした作品で話題を集めています。ソーセージやプリッツエル、チーズに缶詰…。かわいくて、おいしそうで、アート性があり、そしてどこか面白くてハッピーな気持ちにさせてくれる作風に惹かれます。もちろんどれも食べられないけれど、永遠のおいしさを約束してくれる目で楽しむフードが展示販売されます。京都店での開催時には、松尾さんが作る”ICE CREAM SANDWICHES”を具現化した、食べられる“アイスクリームサンドイッチ”も同時に販売されるのでお楽しみに。さらに注目は、松尾さんとテンベアがコラボした、テンベアショップ別注のバゲットトートが販売されること。ユーモア溢れるメッセージがプリントされたこのトートはテンベアショップでしか買えない、というレア感にもワクワクします。そんな松尾さんについて、作品のこと、テンベアとのコラボやプリントされたメッセージのお話などをインタビュー。イベントに足を運びたくなるような、興味深いメッセージを聞かせてくれました。

Q はじめての作品は何になりますか? またそれを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

最初に作ったのは、ニューヨークのストリートでよく売られている、プリッツエルです。きっかけは、ちょうどその頃に読んだ柳宗理さんのエッセイの中で、”生きている工芸”のひとつとして、ハート形のドイツの編みパンが紹介されていました。柳氏がドイツに住んでいた頃、様々な形のパンを部屋に飾って楽しんでいたとありました。その発想にとても驚きました。そこで真似をして、ニューヨークの象徴とも言えるプリッツエルを壁に飾ってみることにしました。毎日眺めているうちに、なぜこんな形をしているのだろう?見ればみるほど、その形の美しさに惹かれていきました。プリッツエルの編み方を調べているうちに、気がつけば布で作っていたのがはじまりでした。

Q 作品作りのコンセプトは?

基本、自分が好きな食べ物を作っています。その場合、味だけではなくシェイプやパッケージデザイン、あるいはそれがある風景も含まれます。例えば、ソーセージは、そのものも好きですが、ブッチャーショップにぶらぶらと様々なソーセージがぶら下がっている風景が好きです。同じくチーズも、チーズショップのディスプレイケースに、様々なチーズの断面図が並んだ画に惹かれます。大好きな画家のWayne Thiebaudが切り取る絵の世界に、とても共感するところがあります。シンプルで誰もが一目で何かとわかる、アイコニックでチャーミングな食べ物を被写体に選んでいます。

Q 1点1点手作りだそうですが、作る際の面白さ、難しさはどんなところですか?

これを布で作ってみたら? とひらめいて、最初の1点を形に起こしていく時が一番楽しいです。特にビーズつけや刺繍は瞑想にも似ていて、ただ無心で指だけを動かしています。刺繍は一度指がのってしまうと、トイレに立つのも忘れて黙々と刺し続けることもあって、ソーイングハイ状態になります。難しいところは、どんなに好きな食べものでも、布にしてみたらいまいち? ということも多くボツにしてしまうことも少なくありません。また、複雑な形の場合、なかなか思う様な形が出せずにパターンメーキングに苦戦することもあります。

Q いちばんのお気に入り、代表作を教えてください。

いちばん思い入れのある作品は、2019年のクリスマスにリトルイタリーの最も古いブッチャーショップのオーナーMoeさんに贈ったリブアイステーキです。1923年創業の家族経営のブッチャーショップの3代目オーナーのMoeさんとの出会いは特別でした。95歳になっても、毎朝ミートマーケットへ買い付けに行き、毎日必ず店に立つ、生涯現役を貫いていらっしゃるそのお姿と、生き方にただただ感銘しました。Moeさんが、店のシグニチャーとおっしゃるリブアイステーキを写真に撮らせてもらい、その脂身のマーブルを刺繍で再現した作品をステーキ・トロフィーとしてプレゼントしました。今も、お店に飾ってくださっていることがとてもうれしいです。代表作と言えるかどうかわかりませんが、ソーセージシリーズはホイットニー・ミュージアムがミートパッキング・ディストリクト(肉の問屋街)に引っ越した際に声を掛けていただき、ミートフリーのソーセージというユーモアを込めて作り始めました。このソーセージをきっかけに、YUKI & DAUGHTERSを知ってくださったという方も多く、趣味の延長にあったプロジェクトが一歩前進する大きなきっかけにもなりました。

Q テンベアとの初タッグですが、テンベアの印象は?

何を隠そう無類のトート好きで、お話をいただいた時とてもうれしかったです。実は、テンベアさんは私がニューヨークに移住した後にスタートされたので、バッグとブランド名が一致したのは最近のことでした。同じくトート好きの友人たちがテンベアさんのトートを使っていたので、バッグの存在は知っていました。テンベアさんのバッグに感じるのは、インダストリアルの匂いがすること、そしてバッグであると同時にツールでもあること、そこに魅力を感じました。テンベアさんの始まりでもある第1号のアイテムがバゲットトートだったことにもご縁を感じています。

Q コラボバッグの魅力とは。

YUKI & DAUGHTERSと平行して、私が主宰する食と食にまつわる出版物を自費出版するリトルプレス、All-You-Can-Eat Pressとのコラボレーションで、メッセージ・トートを2種類作らせていただきました。メッセージ・トートは、持つ人の興味や嗜好を提示するバナーのようなものだと思うのでAll-You-Can-Eat Pressらしく、食にちなんだユーモアのあるメッセージを選びました。
 一つ目はバゲットトートにちなんで、バゲットをテーマにした“Don’t sleep on a fresh baguette.” (焼きたてのパンは今日食べるべし!)という意味なのですが、このメッセージはすべてのパン屋さんへの感謝状でもあります。パンを焼くことがとても手間暇が掛かっているのにも関わらず薄利であるのか、パン職人さんたちの汗と涙の結晶を、一番おいしい状態で食さないのは失礼ではないか! と思うのです。そして、パンをこよなく愛するパン党の人ならば、このメッセージにきっと深くうなずいてくれると思うので、パン党同士のコミュニケーションツールになってくれればいいなと思います。
 もう一つのメッセージ、“A hungry man is an angry man.”(空腹は人を不機嫌にする)。17世紀頃の古いことわざです。このメッセージは自分自身への言い聞かせでもあり、目にする人にもこっそり呼びかけたい。「イライラしていませんか? まずは空腹を満たしましょう!」というメッセージでもあります。韻も踏んでいてウィットの効いた食のことわざをプリントしました。

Q 今回イベントで展開する作品のおすすめは?

「German Pretzel 」
これまでの定番のNew York Pretzelに加えて、ドイツスタイルのプリッツエルを新作として作りました。細く伸ばした先端のねじりと、ぷりっと割れたクープを再現しました。プリッツエルの形は長寿と幸運を願って、腕を組んで祈る姿に由来しているとも言われています。ラッキーチャームとして飾ってもらえればと思います。

「Garlic &Potato」
今回初めて野菜を作りました。1点ずつ微妙に形やサイズが違うのも特徴です。本物のガーリックやじゃがいもと一緒に、バスケットに入れてディスプレイしていても、ユーモアがあって面白いと思います。

「Anchovy 」
アンチョビの細長くて薄い缶のパッケージデザインがとにかく好きで、布で再現してみました。プルは本物のアンチョビ缶から取って、縫い付けています。台所の片隅やデスクまわりにちょこんと置いていただければと思います。

イベント開催日程
東京店:4/17 – 4/25
京都店:4/29 – 5/9

京都での展示では『坂田焼菓子店』のお菓子を販売します。YUKI & DAUGHTERSの新作アイスクリームサンドに合わせ、再現メニューが登場。
販売日:販売日に関しては、後日インスタグラムでお知らせします。

【TEMBEA SHOP別注トート】
BAGUETTE TOTE TEMBEA X All-You-Can-Eat-Press
COLOR:NATURAL/RED/BLACK,
BLACK/BLACK (WHITE STITCH)
色によってメッセージが異なります。

YUKI&DAUGHTERS

YUKI&DAUGHTERS(ユキ&ドーターズ)はアメリカ・ニューヨーク市のブルックリン在住の松尾由貴さんが主催する架空のフードショップ。一点一点手作りしたチーズやバゲットなど永遠においしいけれど、食べられないフードオブジェクトを展開。また2012年には自費出版のリトルプレス「All-You-Can-Eat Press」を立ち上げる。ニューヨークのドーナッツやハンバーガー、ピザなどローカルフードを紹介した食にまつわるハンドマップを発行している。http://allyoucaneatpress.com/

EDIT&TEXT:Chieko Koga(MOKA STORE)