TEMBEA

「育てるトートバッグ」

『TEMBEA』の立ち上げから19年。
 ブランドの根っこにあるもの、大切にしている部分はなにか? 物作りにおいて、常々考えていることです。思い浮かぶのは『使い込む』というフレーズ。まずは自分が使いたいと思うバッグを作ったのが最初で、それは今も変わりません。求めるバッグの形はどういったものなのかを表すならば、ざっくりとしていてなんでも放り込めて気兼ねなく使えるものになります。
 そうして誕生したのが、TEMBEAの始まりのバッグ・バゲットトート。まだ名前も何も決まっていない頃の話です。オーナー自身はこのトートを7,8年ほぼ毎日使用。当時は躊躇することなく、床でも地面にでも置き、汚れたら洗濯機に放り込んで洗う…を繰り返し。(ちなみに今は推奨していません)糸がほつれたり、破れてきてもあまり気にせず、コーヒーのシミや帆布の色褪せとか、生地が柔らかくなって体にフィットしていく感じとか、使い込むほどに含まれていくそのすべてが、なんかいいなと感じたというエピソードも。
 そんな経年と共に年季が入っていく様は、たまらなく愛おしい存在だと思います。新品の時が100点のものではなく、使い込む中で人それぞれの100点に近づくような物作りを常に大切にしています。使い古しながら愛すべき物を育てていくスタイルも良いなと感じます。
 新品のバゲットトートを手にした時から、このバッグがどんな風に育つのかわくわくする日々が始まります。「初めは硬いし、デニムの色が着いたり、自転車のオイルで汚れたり、洗濯しようにもパラフィンが水を弾いて洗いづらかったりと苦戦したことも。その度に向き合って、手で揉んでみたり、洗剤を選び直してみたり、あえて洗濯機で回してみたりと色々試していました」というスタッフ談も。そんな失敗も含めて、やがて”わたしだけのバッグ”になっていくのだと思います。
 気兼ねなく何でも放り込めて、どこにでも持って行けて、汚れてもほつれていてもいい顔だねと笑えるような、おおらかさがバゲットトートにはあります。それを面白い、愛おしいと思ってもらえたらうれしいです。

EDIT&TEXT:Chieko Koga(MOKA STORE)