TEMBEA

DYEING(PINK)

「美しい色」

この世界にはなんとも表しがたい、すてきで不思議な色合いというものがあります。思わず見とれてしまうような美しい色。通りすがりの花や青く芽吹き始めた葉、空、雲。それぞれに光の反射を取り込んで、より美しさを増していき、目を奪われることが。そんな自然からなる唯一無二の色を求めて作った、植物性の染料“ラックダイ”で染めたバッグです。仕上がりは、限りなく淡いピンク色。けれど、ファンシーやスイートというジャンルでは括れない、きれいで絶妙な色。一つひとつ見ていくと、一つひとつ、染めの仕上がりが違っています。さらに、ひとつのバッグの染まりの中にも色むらがあります。不安定で不確かな色彩。けれど、自然のものからのみ生み出される、その繊細さ、美しさ、偶然からなる模様のような風合いが存在します。法則的かつ安定した色を表現できる化学染料を使ったものとはまた違う魅力があるのだと思います。

“草木染め”の中のひとつ、植物性の染料“ラックダイ”。ラックとは、インドや東南アジアに生育する樹木に寄生するカイガラ虫の一種、ラック虫が樹木から養分を吸い上げて分泌する粘液を精製した染料のことです。虫を通して抽出される天然色素。東南アジア、ヨーロッパにおいても昔から重宝され、インドのサリー、インドネシアのバティック、日本では江戸時代の友禅染めにも使われていたという話も。古くから世界中で使われてきた伝統色です。その赤の発色は言葉では表現できないほど、とても、とても美しいのです。

このバッグでは、色素を調整して淡いピンクに仕上げました。いつか、ピンクから赤へのグラデーションカラーを揃えても楽しいかもしれません。自然由来の染料は、光の反射を受けると違った色へと目に映ることがあります。晴れた日、曇りの日、それぞれの色合いを愛おしむのも魅力だと思います。

そんな発色の美しさに秀でたラックダイ。余談ですが、お祝いの席でよく目にする、蒲鉾のあの赤(ピンク?)、かき氷のシロップ、ソーセージなど食品の着色料としても実はおなじみです。食べ物にしても、布製品においても、美しい発色のために選ばれているのです。

DYEING(PINK)

photo & text : Chieko Koga(MOKA STORE)